第1章 転校生

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 「痛ってな?、ヒラメじゃがいも、まじやんなよ。田中からパワーでももらったか」    「うるせえ。てめえのあたりが弱えんだよ。これがフィッシュ&ポテトパワーだ…。ていうか、なんで違うクラスのお前が田中のこと知ってんだよ」  「あんなイケ女を俺が見逃すわけねえだろ」  颯太はイケメンだ。学校にファンクラブがあるほどで、他校にも追っかけがいる。バレンタインデーでもらうチョコは毎年、ダンボール箱からあふれる。  「アホくさ」  拓海は先にたちあがり颯太に手を差し出す。颯太は拓海の手を握る。拓海は力を入れて一気に颯太を立ち起こした。  「花園いくぞ」  泥だらけの顔した颯太が真顔になり拳を突き出しいった。  「ったりめえだろ」  颯太の拳に拓海の拳がぶつると、ふたりは人差し指を1本立てて空に突き上げた。  「HI、HI、HI……」  拓海と颯太が大きな声で連呼し出すと、ずぶ濡れの他の部員たちが集まってきて体を互いにぶつけあい一緒に手をあげた。  HIは、「花園行くぞ」の略である。  「HI、HI…」。  夜のグランドに響くラガーマンたちの無骨な大合唱と降りしきる雨は、いつまでもやみそうになかった。
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