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件(くだん)の四季祭り当日、某宿屋。
「ふざけるな!絶対に嫌だからな!」
アイリーンが用意した宿屋の一室にて、双子から罰ゲームについて告げられた俺は激怒していた。
「罰ゲームだよ?」
「だからこそやらせるんじゃーん!」
「ぬぁ!?
物には限度ってものが……」
「エド、見苦しいわよ。
大人しく言うことを聞きなさいな」ニコッ
「アイリーン!」
「じゃあ仕方ないね~」
「エドワード様とヘレン様に……」
「うわぁぁ!!それだけは止めてくれっ!!」
兄上と義姉上にだけは、絶対に醜態を晒したくない。
それだけはなんとしてでも阻止しなくては!!
「それなら、大人しく言うことを聞く他ないわよね?」ニコッ
ラリーとリリーめ!
こうなると分かっていてアイリーンを呼んだんだな!
ラリーとリリーを睨むと、またもや兄上と義姉上の名を出されて何も言えなくなった俺は、仕方なく罰ゲームの内容を承諾した。
そこからが早かった。
なんせ、事前に打ち合わせをしていたらしい悪魔3名と侍女やメイド総勢20名が、嬉々とした表情で俺を飾っていく様子に成す術も無く、気付いたら鏡に写る自分が女になっていたからな。
「「本当にエドが美女になった~」」
「私たちの見立ては間違っていなかったようね。
皆、よくやったわ!!」
『『『お褒めのお言葉、痛み入ります』』』
俺の女そ……仮装姿は、アイリーンが息を荒くして侍女達を褒めるのも頷ける程の出来だった。
俺の地毛と同じオレンジブロンドの色に変化している長いウィッグは、複雑に編み込まれ高い位置でふんわりと纏められており、顔に至っては、まつ毛は重いくらいに量が増えて瞬きする度バサバサしているし、唇はツヤツヤのプルプルに。
……これで目尻に黒子があれば、大国三大美妃と謳われたお婆様の若かりし頃の肖像画そのものだ。
だから、自分で言うのもなんだが鏡に映る俺はかなりの美女だ。
「それにしても、お婆様の若い頃にそっくりね!!
以前、お婆様が『エドモンドが女の子だったら、わたくしにそっくりだったのに~』って嘆いていたのが分かるわ」
「僕らも一度、王太后様の肖像画を見たけど~」
「超~そっくりだよね!!」
きゃっきゃとはしゃぐ3人には悪いが……女装姿がお婆様に似ていると言われても全く嬉しくないぞ。
本当に全く。
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