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それから俺はいつも通り傲慢な子息という猫を被り、ある人物の元へと向かった。
なぜ猫を被るのかは…………なんというか俺の本来の性格は、プレッシャーやストレスに弱く、目立つのが嫌いであることに加えて、自分のテリトリーに入ってくるまでは相手を警戒して、思ってることと反対の事や傷つけるようなばかり言ってしまったりするからだ。
猫を被っていても、そうなることが多々あるのが最近の悩みだ。
俺の猫被りの件は置いておくとして……先程のある人物とは、俺の傲慢で横柄な態度と肩書きをものともせず堂々と自分の意見を言い、あまつさえ、衝撃的なことがあれば彼女の印象に残るだろうという思い付きと彼女への興味でキスをした時など、逆に翻弄してきて、かなりの醜態を晒させるようなあの編入生……カグラ レイカだ。
キスの件は……俺の自業自得だ。
自分の技量に敵う相手ではなかったんだからな……もう気にしない。
ぼんやりとあの時の羞恥を思い出しているといつの間にか、カグラ レイカのクラスに来ていた。
周りの女子達が騒いでいたのに、俺はよくぼんやりしていたな……いかん、気を引き締めないと!
クラスをキョロキョロと見回して編入生を探していると、女子生徒と談話しているカグラ レイカが居た。
俺と目が合うなりとてつもなくイヤそうな顔をしたカグラ レイカは、俺の周りにやって来る奴らとはやっぱり違う。
よし。
丁寧に、誠意を込めてパートナーに誘おう。
……そう思っていたのに、カグラ レイカの前に立って緊張した俺の口からは、
「お前をダンスのパートナーにしてやる。
俺様に誘われたんだ、こ、光栄に思っていいぞ!」
などという、ふざけた台詞が飛び出してしまった。
なんてことだ……
「申し訳ありませんがお断りさせていただきます」
「なっ!?
俺様の誘いを一度ならず二度断るとは……」
こんなことが言いたい訳じゃないだろう俺!
あ"ーー誰か俺の口を塞いでくれ!!
もうこれは呪いだ。
何で思った事と真逆の事を言ってしまうんだ……
「……なぜだ」
だ・か・ら、違うだろう俺!!
ここはスマートに『そうか…』で去ればいいんだ!
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