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「はぁ……では逆にお聞きしますが、あなただったら自分の意見も確認せずにキスをしてきた人間をパートナーにしますか?
生憎、私はその様な人間をパートナーにするなんて考えられませんので、お引き取りお願い出来ますか?」
カグラ レイカの言い分は最もだ。
よく考えてみたら、興味があるからといって相手の了承も得ずにキスをするなんて、下劣極まりないことだと思う。
まして、そんな相手からパートナーを申し込まれても、それを受ける気になんてならない。
そのことに今更ながら気付いた俺は、
「……かった」
「はい?」
「キ、キ、キスのことだが……俺様が悪かった!!」
どもりながら半ば叫ぶように頭を下げて謝罪をした。
頭を下げての謝罪は王族・貴族の恥だと教えられてきたが、こうしてして謝罪してみて、俺は恥ずかしいとは思わなかった。
「え、や、やり返しましたしもう気にしてないですよ!?
と、とりあえず頭上げてもらえますか!?」
狼狽えたようにそう言ったカグラ レイカを見て、王族だからと驕っていた自分などよりも器がとても大きく、出来た人間だと実感させられた。
俺のように無礼な態度をとった人間に対して、『やり返したからもう気にしていない』などと言って許すのは容易いことではないだろう。
俺は、この目の前にいる女性と身分を越えた友人になりたいと思った。
生徒会役員の皆は、幼馴染みであり気の置けない大切な友人だ。
しかし将来、俺が兄上から公爵の爵位を賜った暁には、今のような甘い友人関係のままでは居られない。
それぞれが領地の運営をしていくような責任のある立場に就くようになったら、今までのような馴れ合いの関係でいては虎視眈々と蹴落とそうとする貴族の輩に足元を掬われかねなくなるからだ。
もし、足元を掬われるような事になれば、保護しなければならない領民の生活が脅かされてしまう。
だからこそ、カグラ レイカのように一貴族でも手を出せない身分で、かつ、身分に囚われずに意見する器が大きい彼女と友人になりたいと思った。
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