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そして何より、アイリーン自身もそうだが、アイリーンを溺愛しているその兄や姉達がかなり恐ろしい。
俺も、兄上や妹、弟のことは大切に思っているが、あそこまでの溺愛はもはや病気だと思う。
幼少期に一度、喧嘩してアイリーンを泣かせた時のことなどは、二度と思い出したくないくらいの恐怖を植え付けられたしな。
アレは幼い子供が経験するにはあまりにも酷な事だった。
「…… グランジュール嬢。
ひとまずお茶を飲んで落ち着いてはどうだろうか?」
「私ったら少しばかり興奮して……」
「あ、アイリーンちゃん!
キヨの国から送られてきたお菓子もあるわよ~
もちろん食べるわよね~?」
「えぇ、頂きますわ!」
キヨハルとジュリアにお茶と菓子を出されてようやく落ち着いたアイリーンだが、俺としては早々に帰って欲しい。
「ふぅ……エド、先程はごめんなさいね?
自分で考えているよりストレスを抱えていたみたいなの」
「いや、こちらこそ、王族に名を連ねる者として、アイリーンにかなりの心労をかけてしまったことを謝らなくてはならない」
「フフッ……いいのよ。
少し不満を吐き出したらスッキリしましたし。
ところで話は変わるけれど……エド、もしかして泣いていた?
目元がウサギのようよ」
淑女の鏡とも言える微笑みから一転、悪魔にしか見えない笑みを浮かべたアイリーン。
普段、神を信仰するより現実を見るべきだと考えている俺だが、この時ばかりは神に助けを求めたのは致し方ないと思う。
そして、一旦うやむやになったはずの今回の件が、俺の目元を見て面白がったアイリーンに嬉々として教えるという悪魔のごとき所業をしたキヨハル以外の生徒会役員達によって、アイリーンの知るところとなるということが、ここまで悲惨なめに遭った原因だと今なら思う。
企画の結果は、当然ハンデのせいで俺が仕事を終わらせるのが一番最後になり、以外にも一番早くに仕事を終わらせたのが双子組という結果だ。
普段の姿からは想像出来ないくらいのスピードで仕事をこなしてく様には、俺だけでなく生徒会役員全員を驚かされた。
今回の企画者であり勝者である双子には、罰ゲームは後日、何でも一つ言うことを聞く件に関しては、アイリーンと双子と一緒に四季祭りへ行くことを伝えられたが、なんとも簡単な事で肩透かしを受けた気分になった。
だがそれは嵐の前の静けさだということに俺は気づいていなかった。
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