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婚約
―Ⅰ―
サリはその日の朝も少し早い目覚めだった。
今日はカリとイズラの婚約式で、11時からだが、自分も手伝いに行かなければならない。
身支度を済ませると、朝食はゆうべのうちに、アークの部屋に来るようにと言われていたので、少し早いかとは思ったが、居室を出た。
アークの部屋に着くと小間使いに案内され、サリは食事室に入った。
食事の用意がなされていくうち、アルとファイナがやってきて、朝の挨拶を交わす。
「今日は朝のうち、アークと一緒に過ごすのでしたかしら」
「ミナたちもな。遊戯室で。何する?」
アルがファイナを見て、ファイナは首を傾けた。
「取り敢えず行って見てみればいい」
今朝は王城の遊戯室を使って遊ぶ予定なのだ。
サリが食事を終えて、食後の茶を楽しんでいると、アークが起きてきた。
「おはよう!サリはすぐ家に帰るんだっけ?」
「ええ、9時にネハナ邸に行くんですの。それまでに、何かしら手伝えることがあるかもしれません」
それからしばらくお喋りを楽しんで、8時前にサリは王城を出た。
ユヅリ邸に戻ると、カルトラはサリに、焼きあがったお菓子を持たせて、馬車に載せるように言った。
数が多いので、重いのだ。
使用人たちも運んでくれるのだが、手が足りないとのことだった。
サリはいくつかのお菓子を馬車に載せるのを手伝い、カルトラと乗り込んで、9時前にユヅリ邸を出た。
ネハナ邸では既に準備が進んでいて、茶室から続く露台と庭を開放して、机を用意していた。
ネハナ邸の庭には大きな滝と噴水があり、うつくしい花が咲き誇っていた。
「まあ、いつ見ても素敵なお庭ですわね」
リノイアに会ってサリがそう言うと、彼女は忙しそうに立ち働きながらにっこり笑った。
「ありがとう。こんな風に使えるなんて思わなかったわ」
今回、婚約式をネハナ邸で行うと決めたのはリノイアだ。
養子に出したイズラのことをずっと気に掛けていて、こんな機会に恵まれたのならと、頑強にネハナ邸を使うことを主張したのだった。
机に飾る花、提供する食事、食器類、と、どんどん支度は進み、気が付くとあっという間に11時に近付き、客たちが訪れ始めた。
リノイアは夫レザラ・ノア・ネハナとともに客の挨拶にまわり、サリとカルトラは奥で支度を続けた。
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