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「元々、風は放浪癖があるから、無理に縛りつけずに自由にさせている。その動きは国内に留まらない。君に同行するようになってから、行き先が容易に知れるので、助かっているよ」
ユラ-カグナが言った。
「そうだな。デュッカがすべき報告をお前がしてくれるので、その点でも助かっている」
ミナは、ほっと息をついた。
「お役に立ててなによりです」
言っている間に、甲羅に包まれた細長いレビが目の前に置かれる。柑橘系の垂れが添えられ、おいしそうだ。
食べてみると、弾力のある身が歯応えあり、柑橘系の垂れと相まってよい味だ。
「遠征続きで疲れてはいないか」
ユラ-カグナの問いに、ミナは首を傾けた。
「帰ってくると、ああ疲れたなあって思います。今は平気ですよ」
ユラ-カグナは頷いて見せ、休みたい時はいつでも言えと言った。
「相手の事情など考えるな。こちらで調整する。そのために俺たちはいるからな」
ミナは笑って、はい、と答えた。
そんな会話の横で、同じくレビのおいしさに満足しながら、ルークはシィンに聞いていた。
「零の月の祭は見に来てくれるの?」
「1日ぐらいは行きたいところだ。海岸警備の巡視があるから、実際のところ、難しい」
「海岸警備、行くんだ」
「真夜はな。真昼(しんちゅう)の6日から10日の間は行けるかもしれん」
「ほんとう?期待しとくね!」
その様子を見ながら、ファイナは少し羨ましく思った。
自分がこんな風に待たれることはまずないだろう。
「あ、来年は初めての零の月だから、彩石騎士のみんな連れて祭に行こうと思ってたんだった。ばらばらで残念ね」
そんなアークの言葉が聞こえてきて、ファイナは耳をそばだてた。
ファラが言う。
「まあ、そうでしたの。この年末年始もアークと一緒に過ごせると思ってましたわ」
「もちろんファラたちも連れてく気だったわよ。でも今回は私も真夜は王城かなあ」
その言葉を聞きつけたらしいユラ-カグナがアークを見た。
「真昼は祭に行ってもいいぞ。と言っても1日程度だろうが」
「ほんとに?やった!」
アルが口惜しげに呟いた。
「あー、そっか。今年は夜店の食い歩き行けないんだな」
ファイナはアルに目を向けて言った。
「毎年そんな事してたのか?」
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