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休日
―Ⅰ―
今朝もミナはデュッカに膝枕をして、首を傾げていた。
一体これはどういう状況だろうか。
外の空気を吸いたくて露台に出ると、デュッカも露台に出ていて、次の瞬間には膝枕することが決まっていた。
昨日も一昨日もこんな調子で、ミナは何か間違ってる、と思うのだが言い出せずにいる。
明日は露台に出るのをやめてみればいいかな、と思ってはいるのだが、避けていると思われないだろうか?
いや、避けようとしていることに変わりはないのだが。
「何を考えている」
不意に、うなじを撫でられてぞくりとする。
「えっと…なんでもないです」
しばらくすると小間使いが来て、食事の支度をしていく。
「整いました」
その言葉にデュッカが起きあがり、一緒に朝食を摂る。
「今日はどうする気だ」
「護衛がいませんから…王城で何かして過ごします」
デュッカは目をあげた。
「何かしたいことはないのか」
ミナはちょっと笑って答えた。
「特には。強いて言うなら、出掛けたいですかね…何か目的があるわけではないんですが、ひとりでぼんやり歩いてみたい」
そう言うと、デュッカは少し考えているようだった。
「俺と出掛けるのならば問題あるまい」
「デュッカは今日は風の宮に行って、用事があるのでしょう?それに、旅の支度もあるはずでは?」
「風の宮はたいして時間を取らない。旅支度は適当に調える。付き合え」
「えっ、と…アークの許可を取らないと?」
自信なさげにそう言うと、デュッカは即座に答えた。
「構うな。今日はあれも休みだろう。起きてもいないはずだ」
こうして、結局一緒に出掛けることに。
ミナは少し後ろめたいながら、楽しみにしている自分に気付いていた。
今日は護衛がいない。
ひとりではないものの、それは自由な時間だ。
食事を終え、身支度を済ませると、ミナはデュッカと黒檀塔に向かった。
船着き場に来ると、大きなバルタ クィナールが目を引いたが、すぐにミナは、その前方に接岸している船で、荷を積む者たちに目を向けた。
ステュウとゼノとラシャだ。
旅の先行をするため、今日、ザクォーネに向けて立つ。
近付くと、3人とも気付いて、船を降りるとミナの前に立った。
「気を付けてね」
「ああ。ミナたちも気を付けて」
「うん」
ステュウの言葉に、ミナは、こくんと頷き、出発する3人を見送った。
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