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―Ⅱ―
ザハリラは身支度を済ませると、部屋にある長椅子でぼんやりと過ごしていた。
昨日は朝からムトたちが来て、様々な所に連れて行かれた。
公共施設がほとんどだったが、その建物の立派さに、ザハリラは目を見張るばかりだった。
建物ごとの安全、水や火などの備え、塵芥や汚水の処理に至るまで、不足も無ければ漏れも無く、その設備は完璧と見えるのだった。
ザクォーネ王国とあまりに違いすぎて、ザハリラは圧倒された。
そうして昨日見たものを思い出していると、不意に扉が叩かれた。
返事をすると、アルとファイナが入ってきて、食事は摂ったかと聞かれ、そういえば摂っていないと気付いた。
「じゃあ食堂に行こうぜ」
とアルに促され、3人で王城内の食堂に向かう。
「昨日はどうでしたか?」
ファイナに聞かれ、ザハリラは、はあ、と気の抜けたような返事をした。
「素晴らしかったです…ザクォーネにはないものばかりで、何から驚けばいいやら…」
アルとファイナは目を見交わした。
「こちらにあるものがすべてではないですし、不足を感じたなら、これから設置していけばいいですよ。ザクォーネはこれからなんですから」
「あんま深く考え過ぎんなよ。全部を一度にはできないだろ」
「そっ、それはそうですが…」
「それより今日はどこ行きたい?つーか昨日どこ行ったんだ?」
「城を出て、まずは近くの学習場に行きました。ほとんどの部屋は空いていましたが、アルシュファイドは基本的に、藁と円の日は休みだとか?」
「例外はありますけどね。勤務形態が違う職業があるんですが、基本的には、週7日のうち、2日は休みます。役所なども、藁と円の日は、一部の簡単な業務だけで、他は全体的に休みです」
「他にはどこ行ったよ?」
ザハリラは思い出しながら、ひとつひとつ挙げていった。
遊戯場、四の宮、律法部、役所、水道局、長距離通信用の伝達を行うための集配所と、それを統括する通信局、客車寄せ…。
「色々見せてもらいました」
「なんかレグノリアはほぼ見たっぽくね?採石場にでも行くか」
「そうだな、今の時間からなら充分行って帰ってこられる」
そういうことで、3人は朝食を終えると、王城前の客車寄せに向かった。
6人乗りの客車はゆったりとしていて、奥の窓際に座ったザハリラは、アルシュファイド王国の町並みを眺めた。
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