休日

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       ―Ⅲ― ミナに見送られたステュウ、ゼノ、ラシャは、船の暴露甲板で軽く鍛練していた。 船の名はアルカテア。 バルタ クィナールに比べれば小さいが、設備は充分整っていた。 3人がいる暴露甲板は船首側の上甲板にあって、船尾楼に佇む船員たちが、そんな彼らの様子を眺めていた。 「なんか見られてるって、気になるな」 ゼノの言葉に、ステュウとラシャ、そして3人の案内役を務めるレッカ…レッカトーレ・ハルビノサが、その視線の先にある船尾楼を見上げた。 「皆、ハイデル騎士団が気になっているんだ。俺もそれで案内役に立候補したくらいだし」 レッカが笑って言った。 「何が気になるんだ?」 「やはり実力かな。自分たちも立候補して落とされた者が多い」 ハイデル騎士団の選定には、所属問わず、多くの騎士たちが名乗りを上げ、その多くは、勝ち抜き戦で敗れた。 「期待に沿えなくて悪いが、今ここで本気を出す気はない」 彼らの旅は始まったばかりで、まだザクォーネ王国に着いてすらいない。 レッカは笑いながらも、鋭い視線をステュウに向けた。 「気になるんだが、セルズでの賊討伐に、風の宮公はどれほど関わった?」 ゼノが答えた。 「東セルズではまったく動かなかったよな。西セルズでは動いたけど、あれは大掛かりだったな」 ラシャが頷いて、レッカを見る。 「風の宮公は、恐らく命を取る方が楽だったはずだが、そうはせず、大きな捕縛の風から逃れた者たちの捕縛を、俺たちに命じた」 「じゃあ全員捕縛したのか」 ステュウが頷いた。 「多少の怪我はさせたがな。ミナたちの心の負担を考えたんだろう」 「ああ、普通の女性なのだな」 「そうだ」 ステュウは今朝来たミナを思い出す。 そのときのことを考えると心がほんのりと温かくなるのを感じる。 「さあ、喋ってばかりいないで手合わせをしよう。2対2でいいな」 ラシャの言葉に頷き、4人は活動場で向かい合う。 チタ共和国のセムズ港には、明日の朝、到着する予定だ。 それまで、ステュウたちは船の上。 逸る心を鍛練することで宥め、3人は明日を待つのだった。
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