休日

9/9
前へ
/122ページ
次へ
       ―Ⅴ― シィンは、アークとルークとともに王城の喫茶室で15時の茶をいただいていた。 今日は朝から長い時間、ルークと共に過ごせてシィンは幸せだった。 いつもはシィンが忙しく、あるいはルークが巡視に行っているので、こんなゆったりした時間は貴重だった。 「ああ、こうして3人で過ごすのって久し振りだね」 「そうね。ルーク、王城から主神殿に通えばいいのに」 「一応、僕が居るべきは主神殿だからね」 「気にする必要ある?」 「ありますとも。僕は祭王だからね」 アークは唇を突き出してルークを見た。 そんな従妹のかわいらしい姿に、ルークは笑顔を見せる。 「また泊まりにおいで。まあ、しばらくはそんな余裕ないけど」 「余裕は作るわっ。それにしても、ひと月船上生活ってどんな感じかしら?」 「どうだろう。案外、陸上と変わらないかもね。マデリナ・クィッテだし」 「ユーカリノでもマデリナ・クィッテに宿泊するの?」 「うん。その方がいざというとき動きやすいからね。区長たちには悪いけど…」 ユーカリノでは、1年かけて、祭王を迎える準備が進められてきた。 宿泊場所も空けておいてくれているだろうに、その点、申し訳なく感じる。 「ただ、食事は世話になることが決まってるんだ。アークも、来たら早めに言ってね。準備に含めてもらわなくっちゃ」 などと話して時間は過ぎ、切り上げると、夕食まで屋上庭園で過ごすことに。 そこは政王と祭王、そしてマナ-レグナの居室から行ける庭で、中庭ほどの広さはないものの、美しい庭だ。 3人で話しながら散策して、夕日が沈むのを見る。 「この半年で、いろんなことしちゃったわ」 「ここらでちょっと息抜きした方がいいかもね」 「ミナたちが戻ったら、彼女らだけでなく、お前たちも休め」 シィンの言葉に、アークは長い息を吐いて、そうね、と言った。 「じゃあ、1月は休みの月だ」 「毎週末主神殿に泊まりに行ってもいい?」 「構わないよ!」 え、それはちょっと、と言いたくても言えなくなってしまったシィンは、輝く紅月を仰ぎ見て、それと判らぬよう、溜め息を吐いた。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加