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―Ⅴ―
シィンは、アークとルークとともに王城の喫茶室で15時の茶をいただいていた。
今日は朝から長い時間、ルークと共に過ごせてシィンは幸せだった。
いつもはシィンが忙しく、あるいはルークが巡視に行っているので、こんなゆったりした時間は貴重だった。
「ああ、こうして3人で過ごすのって久し振りだね」
「そうね。ルーク、王城から主神殿に通えばいいのに」
「一応、僕が居るべきは主神殿だからね」
「気にする必要ある?」
「ありますとも。僕は祭王だからね」
アークは唇を突き出してルークを見た。
そんな従妹のかわいらしい姿に、ルークは笑顔を見せる。
「また泊まりにおいで。まあ、しばらくはそんな余裕ないけど」
「余裕は作るわっ。それにしても、ひと月船上生活ってどんな感じかしら?」
「どうだろう。案外、陸上と変わらないかもね。マデリナ・クィッテだし」
「ユーカリノでもマデリナ・クィッテに宿泊するの?」
「うん。その方がいざというとき動きやすいからね。区長たちには悪いけど…」
ユーカリノでは、1年かけて、祭王を迎える準備が進められてきた。
宿泊場所も空けておいてくれているだろうに、その点、申し訳なく感じる。
「ただ、食事は世話になることが決まってるんだ。アークも、来たら早めに言ってね。準備に含めてもらわなくっちゃ」
などと話して時間は過ぎ、切り上げると、夕食まで屋上庭園で過ごすことに。
そこは政王と祭王、そしてマナ-レグナの居室から行ける庭で、中庭ほどの広さはないものの、美しい庭だ。
3人で話しながら散策して、夕日が沈むのを見る。
「この半年で、いろんなことしちゃったわ」
「ここらでちょっと息抜きした方がいいかもね」
「ミナたちが戻ったら、彼女らだけでなく、お前たちも休め」
シィンの言葉に、アークは長い息を吐いて、そうね、と言った。
「じゃあ、1月は休みの月だ」
「毎週末主神殿に泊まりに行ってもいい?」
「構わないよ!」
え、それはちょっと、と言いたくても言えなくなってしまったシィンは、輝く紅月を仰ぎ見て、それと判らぬよう、溜め息を吐いた。
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