13人が本棚に入れています
本棚に追加
「前にやった5人同時の打ち合いがいいな、私は。鍛練棒でやったやつ」
ああ、あれか、とパリスが言う。
「なんだなんだ、そんな楽しそうなことをするなら声を掛けろよ」
「お前は普段から朝練やらないだろ」
スティンの言葉に、パリスが返す。
「じゃあ鍛練棒を取ってくる」
「私も行きます」
イルマはムトについていき、鍛練棒置き場から2本取った。
3人のもとに戻りながら、ムトが聞いてきた。
「次の任務は年末年始を挟む。大丈夫か」
イルマは頷いた。
「両親には、あらかじめ手紙を送っておきます」
「遠慮はするなよ」
「そういうのはないです。ただ今は、ミナのそばで役目を果たすことが…楽しいです。こんなこと、言っては、あちらの方々に悪い気がしますが」
「仕事中毒だな…」
「かもしれません。でも、ミナが休むときは私もこうして休んでますから大丈夫です。なんというか、気持ちが違うんです。同じことをしていても」
ムトは頷いた。
「そうか。なら遊ぶとするか。パリス、スティン、受け取れ」
ムトは2人に向けて鍛練棒を半ば投げ、イルマは、きちんと渡す。
「リザウェラ」
「ありがとう」
全員が鍛練棒を持ち、気付くと観覧席に人が増えていた。
だが5人は互いを見合い、気にならない
始まりの合図はなかった。
5人は一斉に中央に向かい、走り出す。
激突が起こるが、イルマは撥ね飛ばされる勢いで、後方ながら空に浮き、即座に頭上から振り下ろす!
他の4人は、2撃目がそうも早くに襲いかかるとは思っておらず、不意打ちをくらって思わず仰け反るか背を向ける。
いずれにせよ乱れた均衡を立て直そうとする片足を、地に着いたイルマは無情に払った。
敏感に反応したのはリザウェラで、足を払われるかどうかで、浮いたもう片方の足に体の重みを移動させて、地に着けた。
他の3人は、辛うじて転がるのを避け、地面に片手をつく。
地面に近い彼らが次に見たのは、ただ1人立っていたリザウェラへのイルマの攻撃。
それは鮮やかな素早い動きで、3人は一瞬、見入ってしまった。
我に返ったのが早かったのは、パリス。
低い位置で体勢を整え、呆けている2人の、地についた片手を鍛練棒で薙ぎ払う!
ムトとスティンは、その空を切る音に反応して、両足を地につけ、立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!