沸き立つもの

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「前にやった5人同時の打ち合いがいいな、私は。鍛練棒でやったやつ」 ああ、あれか、とパリスが言う。 「なんだなんだ、そんな楽しそうなことをするなら声を掛けろよ」 「お前は普段から朝練やらないだろ」 スティンの言葉に、パリスが返す。 「じゃあ鍛練棒を取ってくる」 「私も行きます」 イルマはムトについていき、鍛練棒置き場から2本取った。 3人のもとに戻りながら、ムトが聞いてきた。 「次の任務は年末年始を挟む。大丈夫か」 イルマは頷いた。 「両親には、あらかじめ手紙を送っておきます」 「遠慮はするなよ」 「そういうのはないです。ただ今は、ミナのそばで役目を果たすことが…楽しいです。こんなこと、言っては、あちらの方々に悪い気がしますが」 「仕事中毒だな…」 「かもしれません。でも、ミナが休むときは私もこうして休んでますから大丈夫です。なんというか、気持ちが違うんです。同じことをしていても」 ムトは頷いた。 「そうか。なら遊ぶとするか。パリス、スティン、受け取れ」 ムトは2人に向けて鍛練棒を半ば投げ、イルマは、きちんと渡す。 「リザウェラ」 「ありがとう」 全員が鍛練棒を持ち、気付くと観覧席に人が増えていた。 だが5人は互いを見合い、気にならない 始まりの合図はなかった。 5人は一斉に中央に向かい、走り出す。 激突が起こるが、イルマは撥ね飛ばされる勢いで、後方ながら(くう)に浮き、即座に頭上から振り下ろす! 他の4人は、2撃目がそうも早くに襲いかかるとは思っておらず、不意打ちをくらって思わず()()るか背を向ける。 いずれにせよ乱れた均衡を立て直そうとする片足を、地に着いたイルマは無情に払った。 敏感に反応したのはリザウェラで、足を払われるかどうかで、浮いたもう片方の足に体の重みを移動させて、地に着けた。 他の3人は、辛うじて転がるのを()け、地面に片手をつく。 地面に近い彼らが次に見たのは、ただ1人立っていたリザウェラへのイルマの攻撃。 それは鮮やかな素早い動きで、3人は一瞬、見入ってしまった。 我に返ったのが早かったのは、パリス。 低い位置で体勢を整え、呆けている2人の、地についた片手を鍛練棒で薙ぎ払う! ムトとスティンは、その空を切る音に反応して、両足を地につけ、立ち上がった。
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