13人が本棚に入れています
本棚に追加
―Ⅵ―
カリは落胆の色を隠せなかった。
昼食の後も探し、今は休憩のため喫茶店に入っている。
結局、どうしてもイズラの石は見付けられなかった。
あと1時間もしたら帰らなければならないので、もう選別場に行かなければいけない。
選別場でも探すことに変わりはないよとイズラは言うが、やはり自力で探し出したかった。
だが落ち込んでいても仕方がない。
カリはイズラとともに選別場に向かい、腕飾りに使えそうな石を求めた。
「1000カロン以下ですか、それとももっと大きな石?」
係の者に聞かれて、カリとイズラは互いを見合わせて、取り敢えず1000カロン以下の石を見せてもらうことにした。
だが、その数は膨大で、カリもイズラも口を開けてしばし止まってしまった。
「カロンごとに分けているので、婚約石であれば、値段的にも1000カロンが妥当ではないでしょうか」
そこでカリたちは、イズラが見付けた石を選別してもらった。
すると、この石は600000カロン程度であると選別された。
購入したら、6,000,000ディナリもする。
ふたりはこれに、個人所有証明書を発行してもらい、待つ間、1000カロンより大きな力量を持つ彩石を見せてもらった。
その数は、1000カロン以下よりもずっと少なかった。
カリは、何気なく見ていく中で、茶色の交ざったやわらかい色合いの水色彩石を見付けて、胸が高鳴った。
これこそカリが探していた色だ。
選別札を見ると、5000カロンで、購入するなら50,000ディナリとなることが判る。
大きさは、腕飾りには少し大きいようだったが、持ち運べないこともない。
「わたくし、これがいいですわ!」
カリが突然声を上げ、イズラが側に寄ると、カリはその石をしっかり握って、けして譲らないぞとイズラを睨むように見るのだった。
そんなカリの様子は初めてで、イズラは驚くと同時にかわいいなと思ってしまった。
「でもカリ、腕飾りにはちょっと大きいんじゃ…」
「わたくし、これがいいんですわ…!」
そう言って聞かず、イズラはなんだか嬉しくなって頷いてしまった。
料金は支払うと言うカリを止めて、イズラは50,000ディナリを支払い、ふたつ分の個人所有証明書を持って選別場を出た。
「よろしかったんですの?わたくしにも払う準備はありましたのに…」
イズラは笑って頷いた。
「そんなに拘ってくれるのが嬉しかったから。僕に払わせてよ」
最初のコメントを投稿しよう!