13人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと違うカリを見られて、イズラは幸せだった。
ふたりは馬車に乗り、互いの石を矯めつ眇めつして見ながら、今日見た色々なことを話した。
話している時のカリは、常の穏やかな笑顔ではなく、興奮の入り混じる、かわいらしい様子で、イズラは抱きしめたくて仕方がなかった。
ユヅリ邸に戻り、石を見せると、カルトラはがっかりした様子を隠せないようだった。
だが、カリは胸を張って言い切った。
「ごめんなさい、お母様。でもわたくし、どうしてもこれが欲しかったんですの」
カルトラはそのカリの態度に、目を瞬かせたが、やがてゆっくりと微笑んだ。
「まあ、あなたがそれで…それがいいと言うのなら、わたくしが口出すようなことではありませんわ」
そうして、腕飾りがだめなら、それ用の袋を探しましょうかと気持ちを切り換えたようだった。
やがてサムナも帰ってきて、4人で明日の予定を話し合う。
サリは今夜は王城で夕食を摂るということで、帰らない。
「明日のお式は11時から。ネハナ邸で親戚や職場の方、もちろんお友達にも招待状を飛ばして、ほとんど参加のお返事をもらいましたわ。9時頃から準備のためにネハナ邸に行くから、サリには手伝ってもらえるよう言っているわ」
サムナが言った。
「カリはイズラと一緒に時間通りにおいで。彩石を持ってね」
「わかりましたわ」
「他に持つものはありますか?」
「いや、ないよ。お前たち自身が来れば充分だ」
そうして、誰が来られる、来られないなどを話していると、食事の時間となり、4人は夕食を楽しんだ。
食事を終えた後、帰り際、イズラはカリに、今日はありがとうと言っていた。
「まあ、自分のことでもありますのに、お礼を言うなんてなんだか変ですわ」
「そうかな。ただ…あんなに懸命になってくれたのが嬉しくて」
「懸命にもなりますわ。だって、わたくし自身が身に付けたいものだったのですもの」
それを聞いて、イズラはまた幸せを味わった。
イズラはカリの耳元に口付け、また礼を言った。
今度はカリは無言で、自分の耳に手をやる。
その顔は赤い。
イズラは笑ってそんなカリにおやすみを言い、自分の邸へと帰って行った。
最初のコメントを投稿しよう!