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妹と共に入学祝いを終えた後の自室。
広間は未だに宴会騒ぎで在ったが飲酒ができぬ妹と早いうちに抜け出してきた。
静まり返った夜。だが、胸騒ぎがして僕は寝間着の胸元を抑えた。
「なんだ…これは」
まるで警鐘のように急激な頭痛が起こり
それが微かに収まると、喉元を中心に炎症のようなものが起こった。
喉が渇くような感覚だった。飢えを覚えた。
僕はずっと、両親が死に叔父夫婦に引き取られた後もずっと妹の事だけを考えていた。
幼い頃から家族の情を超えた想いを妹に抱いていた。
妹を愛していた、独り占めにしてやりたいと考えるほどに。
守る為に色んなものに手を染めた。
だが、枷が外れたか獣のようにー深く傷つけてやりたいと思った。
鏡を見ると、目がいつの間にか赤く染まっていた。
***
「ふう…」
入学祝いで宴会のようになっている広間を後にして自室に戻ると
すぐさま布団の中にもぐり寝る準備をした。
まだ四月の始めだった為にすっかり日が落ちた今では夜風が少し肌寒かった。
カタン
部屋の障子が動く音。
「…だれ?」
兄の菊だった。
月の光を背後にし表情は良く見れなかったが双眸が赤く煌々と輝いているのをみた。
その時本能的に逃げ延びなければならないと咄嗟に思った。
だが、思うように体が動かなかった。
まるで猛獣に睨み付けられ逃げられなかったように。
「さくら…」
兄は呟くとあっと言う間に妹を組み敷いてしまっていた。
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