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「…下僕よ、心しておけ。決着の時は近いぞ」
「ああ…何でもいい。僕は切り伏せる事ができるだけでいい」
ここは旧校舎の屋上だった。しかしまるで景色は暗く逆さまになっていた。
旧校舎の屋上の真上に、新校舎とそのグラウンド、街の景色が映っていた。
ここは異界のように空間が捻じれて歪んでいた。
それは黒い外套を羽織る少年の傍にいた人物が原因であった。
白い水干を着た白い髪と赤い瞳を持つ少年は屋上の手すりに座り、楽しそうに上を見上げていた。
「那由他…ついに私はお前と会う事が叶うのか」
千年前、理不尽な決まりにより命を落とした同胞の名を告げる彼の顔は清々しかった。
「紫苑…お前も油断するな、お前がやられたら僕も死ぬんだからな」
少年は頭に掛かった布を下す。左顔に魔法陣のような物が刻み込まれていてそれが赤く光り滲んでいた。
その顔は、捜査上に浮かんだ、行方不明になっていた桜井警部の弟の写真そのものであった。
違うのは、長い髪と赤い双眸だけだった。
左手が音を立てて大きな鎌のような姿に変貌してゆく。
桜井彼方は左手が変貌した鎌に舌を這わせた。
「僕の左手が血が足りないと嘆いているよ」
「私は那由他を手中に収める…お前は自身の強さを証明する為目の前の者を全て切り伏せる。其れで良い、其れで良い」
2人の少年は歪な笑みを浮かべていた。まるでそれらは彼らの容姿含めて人間離れしていた。
終わりの為の闘争を。果てのない闘争に、結末を。
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