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桜は兄と来ていた茶屋件宿屋へと来ていた。
香り紙に書かれた人物に時刻通り合う為に。
店に来ると桜の姿を認めた人物が手招きをしてきた。
桜はゆっくりと席に近づいて行った。
「あの…あなたが曽根埼さんですか?」
「はい…あなたが桜さんですね?」
七三分けにしたスーツ姿の如何にも生真面目然とした男性だった。
「菊さんから話は聞いていると思いますが、あなたにはこの街から逃げる手筈を行ってゆきます」
兄からの手紙にはこう書かれていた。
『茶屋で曽根崎という人物に会う事。これから起こる大きな禍いから守る為一族から逃げなければならない事』
そして兄は自分は後で付いてゆくと付け加えていた。
「あなたは今から夜行列車で京都の叔父様のいる場所へ連れてゆかれる手筈になっています」
「叔父が…?」
叔父は出張で京都に行っていたがどうやら厄介事があったらしく予定の2日から長期滞在となっていた。
「大声では話せませんが、今後十二御家に大事が起きます。その前に妹だけは連れ出せという菊様の言いつかせがありまして…」
「兄は…兄は最初から最期まで、私に秘密をして何も言ってくれませんでした、兄は何を考えているんですか?」
ついに桜は自分勝手な兄に憤りを感じ曽根崎に疑問をぶつけた。曽根崎は閉口してしまった。
桜は嫌な予感のする兄の企みをなんとしても彼から明かさなければならないと思った。
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