5章

12/20
前へ
/28ページ
次へ
「ここかあ…っ!」 桜井がその扉を蹴破ると屋上に出た。 桜井警部と早乙女刑事の体は自分たちの怪我や化物を撃ち倒した返り血で血塗れになっていた。 「なんだ、これ…」 早乙女が驚きの声を上げる。 屋上の空に学校の新校舎とグランド、学校を囲む街並みが逆さまに映っていた。 その光景だけではない。屋上が血塗れになっていて黒い外套を羽織った人物が倒れていた。 「彼方!」 見間違えもない。黒い外套を羽織った人物は桜井が探し回っていた弟だった。横顔はまだ少年のそれだった。 白い平安時代の貴族が着るような衣服を着ていた少年が血塗れになった身長の高めの少年に片手で首を締めあげられている。 彼の右手には大きくも見事な装飾が施されている大剣が握られていた。不思議な青白い光に包まれている。 「待て!卯月紫苑は事件の重要人物であり首謀者とされている。その手を離せ!」 二人とも不思議と白い髪に赤い目という不思議な容姿をしていたが 桜井警部は拳銃を構え卯月紫苑を締め上げ今にも息の根を止めそうな少年に警告を発した。 「…駄目ですよ!こいつは手放せばこの場にいる皆が殺されます。それよりもこのまま、証言させた方が早いですよ」 少年は大声で逆に桜井達に警告を発した。 「はっ、こんな状態で発言をさせるか小僧」 紫苑は苦しそうにしながらも憎まれ口を叩いた。 「五月蠅いよ、下衆、大量殺人鬼。さっさと種明かしをしな」 そう言いながら少年ー十二御家の重要人物のリストにあった如月菊は卯月紫苑の頬を軽く切りつけた。 「ふん…祖先に対し酷い仕打ちをする…お前も十二御家を憎んでいる口であるだろうに」 「お前と比べるなよ。僕の手はお前よりは汚れてない。いいから話せ、何故殺人事件を起こしたのか」 「いいだろう…命を懸けて真実に近づいたお前達に全てを話してやろう」 十二御家の始祖の鬼は口を開いた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加