5章

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「桜、これが最期の外出になるかもしれない…だから兄の我儘を聞いてくれるかな」 「…なんですか」 やはり、やはり。 先ほど邸宅で警察官の長官と思しき人物と話し合っていた兄は何か重大な事を隠しているらしい。 菊は桜に耳打ちをすると懐石に使うような香り紙を渡し、耳打ちをした。 「ー」 桜は涙を零すと、兄に抱き着いた。 ゆったりとした川を望む道。それは学校に向かう道でもあった。 桜はゆっくりと首を上に上げると初めて自分から兄の唇に口づけた。 それも離れ、手が離れる。 桜は兄とは逆に我儘も言わず彼の背を見送った。 菊は後ろを振り向かず手を振っただけだった。 桜は兄の言いつけと願いを叶える為彼とは反対方向の道を進んでいった。
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