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「ああ…血の呪いが全身に回ってしまったか…どのみちこの剣を手に持ったら長くは生きれ無い」
それは十二御家の庭の祠に祭られ、厳重に封印されていた破魔の剣、那由他。
何故封印をされ祭られていたのか。菊は文献で全て目にしていた。
「…鬼の血を濃く引いた者にしか扱えない封印を施してある…そして、使用者の命を削る…ね。僕にはやはり資格があったのか」
残念ながら鬼の血の因子を濃く引いているという者に関係する事柄に引っ掛かっていた菊は
那由他を操れる程に鬼の血を濃く引いていたようだ。
そして那由他は鬼の血の因子を完全に活発化させ、使用者の体を横暴に扱わなければ力を発揮しないという。
「僕の命が尽きるのが先か…卯月紫苑という今回の事件の首謀者の首を取るのが先か…そら、お前の求めていた物が、ここにはあるぞ」
まるで菊の呼び掛けに答えるかのように数多の苦悶にも似たうめき声が近づいてきた。
本来動くはずの無い首のない死骸、顔と手が大きな粘液にへばり付いた物、体の骨や臓物だけが這いずる物、人魂のような表情を持つ黒い靄
どれもグロテスクで人間の体の一部が腐った状態で意思を持ち動き回っている化物だった。
これがある復讐の為に作られた実験体の成れの果てなのを菊は承知していた。
「持ち去られた首だけじゃない。首無し遺体もあったってわけか…卯月紫苑はどうやら趣味の悪い実験を行っていたらしい」
喋りながら菊は舞うように目の前のそれらを切り伏せていった。
飛び散る血飛沫と悲鳴を楽しそうに聞きながら菊の舞踏は続く。
辺り一面が血塗れになってもその軍勢の勢いは収まらなかった。
どれもが菊の持つ那由他目掛けて一斉に飛びついてきた。
やはり那由他が目当ての品かと、菊は楽しみながら、悲しみながら実験の犠牲になった被害者達の成れの果てを切り捨てて行った。
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