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アイツが観客を端からゆっくりと見始めた。
その視線が次第に俺のいる方へと動いていく。
もうすぐで俺の番・・・。
心臓の鼓動が速くなる。
しかし、俺の顔に若咲の視線が止まることはなかった。
彼女ははにかむように下を向いた。
俺が最も気に入っているアイツの表情だ。
心の中でニヤッとする。
部長らしい生徒の号令で、再度五人が丁寧にお辞儀をした。
再び拍手が起こった。
やがて、観客たちが教室を出て行く。
藤村も彼らの後に続いて廊下へ出て行った。
教室の戸口の一歩手前で、俺はもう一度若咲の姿を探した。
指導教員と思われる女性教師が、熱心に生徒たちに話しかけている。
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