第 1 章  高嶺の花

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                         アイツが観客を端からゆっくりと見始めた。 その視線が次第に俺のいる方へと動いていく。 もうすぐで俺の番・・・。 心臓の鼓動が速くなる。 しかし、俺の顔に若咲の視線が止まることはなかった。  彼女ははにかむように下を向いた。 俺が最も気に入っているアイツの表情だ。 心の中でニヤッとする。 部長らしい生徒の号令で、再度五人が丁寧にお辞儀をした。 再び拍手が起こった。 やがて、観客たちが教室を出て行く。 藤村も彼らの後に続いて廊下へ出て行った。 教室の戸口の一歩手前で、俺はもう一度若咲の姿を探した。 指導教員と思われる女性教師が、熱心に生徒たちに話しかけている。
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