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「…なぜ、君がここにいるんだ」
「なぜって…あなたを手放したくなかったからよ」
湖の中にいたはずの龍人を花音が膝枕をして見下ろしていた。
「だから、彼岸の扉と那由多に干渉させて頂きました。
あなたが、卯月紫苑と一緒に連れていかれないようにね」
はあ…と彼女はため息を吐いた。
「俺だけじゃない、君だってこのままでは一族に重い罪を背負わされるぞ」
龍人は花音にあきれたように声をかけた。
「別に今更よ。私、本当は一族の重責に耐えかねてたところがあるから、別にいいの。
それよりーあなたが居なくなる方が耐えられないから」
花音は龍人の頭を優しく撫でた。
一族の在り方に疑問を抱いていた龍人は卯月紫苑に付く事で解放されようとした。
だが、その鍵になるものはもっと身近にいたんだなと思ったし
彼女に深い心配を掛けられている事の方が悲しい事だったのだと気付いた。
「…君が居れば、どんな苦難にも立ち向かっていけるかもな…」
龍人は花音の力強い言動に心を揺り動かされた。
一族に混乱を招いたという報告をしなければならない。
きっと彼女はずっと自分の傍にいてくれるだろうとどこか安心をしていた。
***
数時間だけ異常現象として死者と再び再会できたという報告が相次ぎそれがニュースに取り上げられていた。
お盆前の真夏の奇跡だと、数週間話題になっていた。
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