終章

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あっという間の一年だった。 私たちは真夏の日差しを受けて子供の手を引き歩いていた。 鞄にはかならず柊君から貰ったお守りを身に着けている。 今日はお盆で祖父母の墓参りに両親の実家へと帰っていた。 私は出産の為に学校を辞めたが育児が落ち着いて通信制の学校を選び学ぶようにした。 子供が成長したら大学にも行こうと考えている。 両親に猛反対されたが今になって私の選択はこれでいいのだと思えるようになった。 せっかく授かった子供を、無碍に扱いたくなかったから。 両親がいなかった寂しさも子供を産む事を選んだきっかけだった。 夏が来るたびにあの日の出来事を思い出す。 私は百合子さんにお願いされた通り彼とその子供を大切にしなければならないと思った。 私たちは過ちを犯しつつも歩き続けていかねばならない。 隣にいる柊君と一緒に生きてゆく。 百合子さんの遺言を大切に、守るようにして。 残された事の意味を胸に抱いて今も生きている。 ≪終≫
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