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美術室の一番奥の、石膏像がいくつも並んでいるところへイーゼルを運ぶ。 棚には、授業の選択で美術を取っている人や、美術部員のものであろう画材が、所狭しと並んでいた。 私は咄嗟に、その中に「桐谷遥」の名前を探そうとする。 でも、バスの時間がもうすぐだということを思い出して、また明日にしよう、とすぐに踵を返した。 「あ」 その瞬間、目に飛び込んできたのは、黄色。 描きかけであろうそのキャンバスは、美術室の後ろの方で、イーゼルに置かれたまま、私の視界を独占した。 振り返ったすぐそこにあったのだ。 「……」 鮮やかな黄色のグラデーション。 ところどころ白が混ざっていて、ペインティングナイフでつけられたのであろう縦にのびる直線が何本かアクセントになっている。 色がいくつも重ねられて厚みを持ったところには特徴的な模様みたいなものもあって、繊細さと大胆さを両方持っているその絵は、やはり光とか自由を連想させた。 すぐにわかった。 この絵は……。 「桐谷……さん、の?」
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