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バスの時間が迫っている。
けれども、私はどうしても確認したくて、さっきの2年の先輩に小走りで駆け寄った。
「あの、後ろにあるあの絵、桐谷……、桐谷遥さんのですか?」
「え? あ、あぁ。そうだよ、桐谷先輩の。知ってるんだ?」
軽く驚いて聞き返してきた先輩に、やっぱり、と興奮してしまった私は、自ずと頬がゆるむ。
「はい。知ってます! 美術部なんですよね? 今日は来てないんですか?」
「うん、気が向いた時しか来ないからねぇ」
「そうなんですか」
もっといろいろ聞きたいと思うけれど、このままでは塾に遅れてしまう。
私は、後ろ髪を引かれながらも、「ありがとうございました」と頭を下げて、早足で美術室を出た。
あった! あった、桐谷さんの絵。
ていうか、いた! 実在したんだ!
当たり前のことに、胸を高鳴らせる。
まるでファンの芸能人の足取りを掴んだかのような昂揚感を覚えながら、私はバス停へと向かった。
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