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「あれ? 水島さん、今日は長くいられるんだ?」 「え? あ、あぁ、はい」 髪を耳にかけながら、部長に愛想笑いをする。 内心、悪いことをしている感満載で、バスの時間が過ぎた時計の針を何度もチラ見。 今日の人数は7人。 部長とあとふたり2年生が油絵を描いていて、その他の人はそれぞれ好きなことをしている。 私はというと、いまだにヘルメス像のデッサン。 自信の無さからか、鉛筆の色の薄い、ぼんやりとした絵のままだ。 部長が自分の席に戻ったのを見て、ふぅ、と息を吐き、手を止める。 すでに1時間過ぎた。 あと1時間もしたら、みんな帰る時間だ。 涼子の何気ない一言で、自分にしては思い切ったことをしている。 内緒で部活に仮入部したことすら罪悪感を持っているのに、塾を勝手に休むなんて……。
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