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「……どーも」
まるで、紹介が必要な間柄ではないんですけど、と言わんばかりの無表情で、とりあえず握手に応じる桐谷先輩。
「じゃーね」
そのまま、校舎の方へ歩き出す。
すれ違うときに、片方の頬がうっすらと赤くなっているのがわかった。
「あ」
2、3メートル離れたところで、思い出したような声を出してふいに立ち止まった彼に、私と涼子も振り返る。
とても爽やかな青空と緑をバックに、
「さっきの試合、サーブの空振り鮮やかだったね、水島さん」
と、言葉を投げる桐谷先輩。
「……」
呼び止めてまで言うことか、それ、と思いながらも、
「どーも」
と、嫌味に返した。
反応の悪い私に、ふっと口角を緩めた桐谷先輩は、「ハ」と軽く笑って、また歩いて行った。
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