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「あー、はい。じゃあ来週の火曜日にでも」
私達二人を挟んで先生と会話をしながら、桐谷先輩がちらっと私を見た。
「……」
去年の高美展の作品っていったら、あの、私が桐谷遥に憧れを持つきっかけになった、例の『無題』の作品だ。
そのことに気付いて不覚にも胸が高鳴ってしまったから、無表情の桐谷先輩の視線も、なんだか私の気持ちを見通した目のように思えた。
先生は、「それじゃあ、頼んだぞ」と言って、グラウンドの方へ歩いて行った。
「……あの」
先生の後ろ姿から3人とも視線を戻すと、一番先に口を開いたのは涼子だった。
「桐谷遥さん……ですか?」
「そーですけど」
「水島沙希の友人です! よろしくどーぞ!」
シャッと右手を出して握手を求める涼子。
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