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「アメ、ちょーだい」 バスが揺れる中、背後からヌッと手が出てくる。 「……どうぞ」 「どーも」 のど飴を手のひらに乗せると、スッとその手は引っ込んだ。 ……気まずい。非常に気まずい。 後ろの席の人を意識し過ぎて、背中がパリパリに固まって干からびている気がする。 あの後、桐谷先輩の発言のおかげで、私の “ダメ”発言はうやむやになった。 桐谷先輩の後から美術準備室から出てきた舞川さんは、少しだけ私に何か言いたげだったけれど、部活が終わるまで何事もなく、他の人に何を言われることもなく、時間は過ぎた。 でも、それでも……。 今日に限って、停留所を3つ残して乗客が私と後ろの席の桐谷先輩だけになったバスの車内は、緊張とバツの悪さに押しつぶされてしまいそうだ。 吐く息ひとつで気持ちまで伝わってしまっていそうで、ビクビクする。
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