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「あのさー」
「……」
後ろから声がする。
でも、私は振り返らずに、知らんぷりする。
外は薄暗く、いつもの景色。
いつもと違うのは、穏やかじゃない自分の気持ちと、この状況。
「聞こえてんでしょ」
「……」
「おーい、水島さーん」
ちょっと大きめの声を出すもんだから、乗客が他にいないものの、あわてて、
「今、聞こえました」
と振り向きざまに答える。……や否や、
「“ダメ”ってなに?」
と、私の背もたれに両手を置き、飄々と言葉を被せて聞いてくる桐谷先輩。
「ぐ」
「“ぐ”ってなに? 今度は」
クックックッと笑われる。
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