308人が本棚に入れています
本棚に追加
私は多分、この人の前で、今までで一番赤い顔をさらしている。
体半分を横に向けた態勢で後ろを向いていた私は、恥ずかしくなってその顔をぐるんと自分の足元の方へ向けた。
“からかって”……。
その言葉に、なんとなく自分の気持ちを悟られているような気がする。
「俺が舞川さんと話すの、嫌?」
一瞬、心臓が跳ねた。
足もとに視線を落としたまま、目を見開く。
ドク、ドクと急にけたたましい音が体の中から振動を伝える。
固まった私は、ゴク、と唾を飲み、自分を落ち着かせようとする。
両腕をかけて後ろの席から見下ろしている桐谷先輩。
逃げたいけれど、逃げようがない。
返事をしないのは、肯定と同じだ。
最初のコメントを投稿しよう!