4

31/32
前へ
/32ページ
次へ
視線を合わせたそのままでしばらく沈黙が続くと、終点のひとつ前のバス停の近くまで来ていたことに気付く。 ハッとしてボタンを押した私は、カバンを抱え、降りる準備をする。 「水島さん」 徐行し始めたバスに合わせて腰を少し上げると、後ろから声をかけられ、また振り返った。 「当たりだよ」 「……」 バス停についた。 バスが停まる。 私の体は、慣性の法則でほんの少し前に倒れかけて、またゆっくり戻った。 「だから、ごめんね」 「……」 ビーッという、バスの乗降口の扉が開くブザーの音に重なったその声は、聞き違いかと思ったけど、 「……あ、……はい」 と、私は無表情のまま返事をして、そのまま振り返って通路を通り、バスを降りた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

309人が本棚に入れています
本棚に追加