4

32/32
前へ
/32ページ
次へ
……あれ? バスが遠ざかる音を聞きながら、私は一歩二歩進み、また立ち止まる。 “ごめんね”って……。 放心してしまい、危うくバッグを落としそうになったけれど、慌てて指に力を入れて止める。 「……あぁ」 そっか、……フラれた? 「……」 住宅が並ぶ、車通りのさほどない道を、少しずつ歩き始める。 明かりがついている家、ついていない家。 夕飯の匂いがする家もあれば、入浴剤の匂いがしてくる家もある。 私が見ているのは、日が落ちた直後の薄暗い空。 途切れ途切れに連なる雲が、まるで空のひび割れみたいに見える。 割れ目がオレンジ色と群青を混ぜたような濃い色で、私を見下ろしている。 "フラれた"って……、私、さっき自覚したばっかりだし、告白すらしていないのに……。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

309人が本棚に入れています
本棚に追加