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ずるい。
心底そう思ったけれど、彼の答えになぜか少しだけ嬉しさを覚えたのも事実だった。
特別扱いしてもらえているような、いや、でもやっぱり女として見ていないって念押しされているような……。
うん、……やっぱりずるいじゃん。
完全な悪者にはなってくれない。
「アメ、おかわり」
「……はい」
催促されて、最後のひとつだった飴を手渡す。
彼の指先がほんの少し、私の手のひらに触れる。
また買っておこう。
そう思ってから、諦める気があるのか、と心の中で自分にツッコんだ。
それから数分、普通に喋って、普通にバイバイして、普通に下車した。
「はー……」
バスを降りると、夕方から夜に移行する匂いが鼻をかすめる。
『好きです』
確かに自分の口でそう言った自分を思い返し、フラれたのにもかかわらず、なんとなく自分が誇らしいような気持ちになりながら、家路についた。
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