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「クレヨンが友達だったんだ」
「はい?」
急に何の話が始まったのかと、私は思わずぐりんと振り向く。
私を見下ろす桐谷先輩は、少しだけ黙って、また口を開く。
「親も家にいること少なかったし、友達づきあいも好きじゃなかったし。毎日絵を描いてた。描いてたっていうか、色で遊んでた」
「……」
小さい時の話か……。
「人間同士だと、相手に何かを期待したり期待されたりするでしょ? そんで、それゆえに大小様々な裏切りがあるでしょ?」
「……はい」
「絵はそんなの無関係だからさ。頭ん中の抽象が、自分の力量相応にキャンバスに反映される。裏切らない」
「……」
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