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「すごくシンプル。だから、好き」 そう言ってふわりと笑った桐谷先輩。 表面的というか、あまり自分の領域に他人を踏み込ませないような雰囲気の所以が分かったような気がした。 この人にとっては、人間より絵なんだ。 信用に値するものが。 「なんでそんな話……するんですか? 私に」 まっすぐ彼を見てそう聞くと、彼の口の中の飴が、右頬から左頬へ小さな音を立てて移動した。 「うー……ん、なんでだろ。 今日のこと、水島さんが俺以上に悔しがってくれたから、かな?」 「え?」 「嬉しかったのかも」 「……かも?」 「うん。かも」 そう言って、イジワルな笑みを返した桐谷先輩。 私はその顔を見て、あぁ、やっぱり私は彼のことが好きだと思った。
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