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心地よく揺れるバス。
薄暗い中、さほど明るくもない照明の下、昼でもなく夜でもない、少し非日常を感じさせる独特な時間。
横向きに座る私と、その後ろの席から私の背もたれに腕を預け、覗き込む桐谷先輩。
乗客は前の方にあとふたりいるけれど、私の視界には窓ガラスに映る彼と私しか入っていない。
まるで、切り取られた空間。
この空気の優しさに、自惚れてしまいたくなる。
彼の恋愛に対する意識を知りつつも、やんわりとくぎを刺されているにもかかわらず、伝えずにいられなくなってしまう。
「好きです」
初めて異性の前で口にした好意。
視線は、斜め上にある顔には向けられず、斜め下の座席の脚の方へ落としたまま。
「うん。ごめんね」
わかっていた答えが、思いのほか柔らかい声で返ってくる。
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