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「好きなままでも……いいですか?」
「ダメ」
私らしくない、ありったけの勇気を振り絞って言った言葉に、彼は笑顔でそう言った。
仲がいい女の子、たくさんいるくせに。軽いつきあいでも深い関係の人、いるくせに。
「なに、その顔」
顎に梅干しができていたみたいだ。
桐谷先輩は私の顔を見て、顎に親指を押し付けた。
「彼女にして、とか言ってないです」
「うん。だから」
「だから?」
「水島さんは、他の子みたいに軽い扱いしちゃいけないって、なんか思うから。
だから、気持ちを利用して軽く手を出すなんてこと、できない。
それに」
「それに?」
「こんな感じのままがいい。
男対女になって、この心地いい関係壊したくない」
「私、女です」
「ハ。そうだね。覚えとく」
桐谷先輩はまた笑った。
私の告白の緊迫感を、たやすくほどく。
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