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何も言えないでいる私と諏訪君の横を通り、階段を上り始める桐谷先輩。 タン、タン……と、上履きの音までもが、けだるそうに響く。 「あ、水島さん」 半分上りきって踊り場のところまで来た先輩は、ポケットに手を突っ込んだまま顔をひょこっと出し、私を見下ろす。 「このままこのタイミングでフェードアウトしたら、水島さんが俺の絵をメチャクチャにした犯人として確定されちゃうかもよ」 「……」 雨は降っているものの、踊り場から射し込む光を背に受けた桐谷先輩は眩しくて、私は何度も瞬きをする。 その様子が面白かったのかなんなのか、桐谷先輩はふわりと笑って、また階段を上っていった。
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