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「犯人? 何か事件でもあったわけ?」 先輩の笑顔の残像に佇んだまま静止していた私は、諏訪君の声にハッとする。 「……うん。あんまり大きな声では言えないんだけど、……先輩の絵が誰かに台無しにされてて」 「ふーん……。物騒だな。でも、それとこれとは別問題だろ」 行く必要なし、と鼻息を荒くしている諏訪君に、黒の絵の具のことまでは説明しなかった。 『ねぇ。絵、見てくんない?』 さっき、桐谷先輩に言われた言葉が、彼の笑顔とともに頭に甦る。 大した意味を含んでいないとは分かっていても、私の心は飽きもせずに揺れ動いていた。 「あ、雨、弱まってる」 諏訪君の声に窓の外を見ると、さっきまで土砂降りだった雨は、いつの間にか小雨に変わっていた。 私は諏訪君とその場で別れ、結局その日はそのままバスに乗って塾へと行った。      
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