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「あ」
あった……。
キャンバスに名前は描かれていなくても、私は一発で分かってしまう。
“青”が生きている絵が、ものすごい存在感でそこにあった。
「前の絵と、全然違う……」
ボソリと呟き、絵の細部をまじまじと見る。
青のベースにまるでさざ波のように細い線が幾重にも重ねられていて、ボコボコと飛び出るように絵の具を押し当てられた部分は、泡とも滴とも取れる。
一括りに“青”と言ってはいけないような繊細なグラデーション、ハッとするような補色のオレンジは、飛沫のように弾けていて、アクセントになっていた。
「どこが……スランプ?」
私にとっては、やっぱり他の追随を許さないような、圧倒的な光を放って見えるその作品。
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