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「……うん」
好きだ。
やっぱり……桐谷先輩の絵。
そう思いながら頷いた後、私は視線を美術準備室のほんのわずかに開いているドアへと移す。
あの、『無題 2年 桐谷遥』も……見たい。
今度は去年の美展の作品を見ようと、私は美術準備室へと歩を進める。
「……ん?」
ドアに手をかけたその時、小さな話し声が聞こえた。
先生……?
私はいつぞやと同じように、ドアの隙間からそっと中を覗き込む。
「……っ!」
数度目の既視感と衝撃。
昨日私に絵を見てくれないかと言った人が、髪の長い女子生徒に抱きつかれている。
……って、……え!?
女の子は私に背を向けているので顔は見えないけれども、私は見覚えがあった。
ゆるくカールしていて、少し茶色っぽい長い髪の毛。
まるでお人形さんみたいな……。
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