8

28/40
前へ
/40ページ
次へ
「な……んで」 「だから、席埋まってるし、ひとりで座ってる人で知ってるの、水島さんだけなんだもん」 「や……、時間。この時間にバスに乗らないじゃないですか、いつも」 「だからって乗っちゃいけない? 今日は家族で食事なんだけど」 「……すみません。そうですか」 予期していなかったことに対する動揺と、肩が触れるほどの近さに対する極度の緊張で、軽くパニックになる。 ほんの少し濡れた髪が視界に入る。 雨の匂いが充満する中、桐谷先輩からは、柔軟剤だろうか、なんとなくいい匂いがする。 あ、足があたった……。 ひとつひとつに過敏に反応して、さらにガチガチになっていると、 「飴、ある?」 と言って、顔をこちらに向けられる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加