260人が本棚に入れています
本棚に追加
「な……んで」
「だから、席埋まってるし、ひとりで座ってる人で知ってるの、水島さんだけなんだもん」
「や……、時間。この時間にバスに乗らないじゃないですか、いつも」
「だからって乗っちゃいけない? 今日は家族で食事なんだけど」
「……すみません。そうですか」
予期していなかったことに対する動揺と、肩が触れるほどの近さに対する極度の緊張で、軽くパニックになる。
ほんの少し濡れた髪が視界に入る。
雨の匂いが充満する中、桐谷先輩からは、柔軟剤だろうか、なんとなくいい匂いがする。
あ、足があたった……。
ひとつひとつに過敏に反応して、さらにガチガチになっていると、
「飴、ある?」
と言って、顔をこちらに向けられる。
最初のコメントを投稿しよう!