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「ないっ」 ぶんっと顔を背けてそう言った私は、 「……です」 と付け加えた後で、先輩の肩が揺れているのに気付いた。 「顔、赤……」 「……」 恥ずかしさで赤面していた私の顔は、先輩からのからかわれてる感に、怒りの赤面へと変わる。 私の気持ちを知っていてこういうことをするなんて、性格悪すぎる。 昼休みのことだって……。 思い出して憤りが増し、文句のひとつでも言おうかとした時、バスが動き出した。 曇った窓からでもわかる、ぼんやりと移り変わる景色。 「それにしても、タイミングよく覗く人だよね、水島さんて」 不意に話し出した桐谷先輩に、私はムッとして、 「見たくて見たんじゃないです。ていうか、校内であんなことしてるほうがおかしいんじゃないですか?」 と嫌味を返す。
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