8

30/40
前へ
/40ページ
次へ
「あんなこと、ってキス?」 「え?」 桐谷先輩の言葉に、私は背けていた顔を咄嗟に彼のほうへと向ける。 「あ。なんだ。あの前は見てなかったんだ?」 「……」 ふーん、と飄々と言いながら、イヤホンを片耳につけようとする桐谷先輩。 は? なに? キスもしたの? 舞川さんと? 「同じ部活でそういうの、しないって……」 言いようのないドロドロした気持ちがまた、私の胸の内を埋め尽くしていく。 「つきあうんですか?」 「まさか」 桐谷先輩がもう片方の耳につけようとしたイヤホン。 気付けば私は、それを無理やり取っていた。 「舞川さんに失礼です! そんな、傷付けるようなことしないでください。彼女は本気で先輩のこと」 「みたいだね。じゃあ、つきあおうかな」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加