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「……」
お母さんは鼻でフンと息を吐いて顔を戻し、また私の背中を押しながら歩き始めた。
さっきよりも少し早いスピードで。
角を曲がると住宅街。
私は動揺しながらも何を言うこともすることもできずに、ただただお母さんの横を歩かされる。
「あぁいう人と関わるとろくなことないわよ。他人のペースを乱すことを楽しんでいるとしか思えないわ」
「そんな……」
「先輩だからって、これからははっきり嫌だって言わないとダメよ」
私に発言権を与えないように、お母さんは帰りながらずっとブツブツ言っていた。
どんどん薄暗くなっていく空と、外灯の光でどんどん鮮明になっていくお母さんと私の歩く影。
バス停ひとつ分歩き終える頃には、私の心も体もすっかり疲弊しきっていた。
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