仮想世界の箱庭へ

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「それならアンナさんはどうかな? セツナ、確か仲良かったよね」  ケントが言うのはクラスメイトの女子の名前だ。 「あー……あいつはなぁ」  確かにセツナは彼女とは妙にウマが合いちょくちょく話す中ではあるが、セツナは首を横に振ってスマホの画面を見せた。  セツナが見せたのはテレビ映像を映すアプリだ。そこには数日前には一緒に教室で授業を受けたはずの少女が、生放送のトーク番組に出演していた。シグレとケントがおおっと色めき立つ。 「アンナは今『ANNA』として活動中だ。ハルカやリッカよりよっぽど忙しいぜ」 「なるほど。さっすがオリコントップ10の売れっ子歌手様」 「さすがに芸能人の彼女を誘うのは厳しそうだね……」  アンナ――芸名『ANNA』は若者中心に爆発的人気を誇る歌手にして女優だ。確かにセツナはアンナとは個人的な交友があるが、今や彼女の身は彼女一人のものではない。とても遊んでいるヒマはないだろう。 「でも、どうしよう? 他に誘えそうな人となると……」  ケントが腕を組んで考え込んでいる。  実際のところ彼が声をかければいくらでも女子など釣れるのだろうが、それまで縁のなかった女子なんぞに明け渡してやるほど『VRゲーム体験会』の枠は安くない。  停滞した三人の会議だったが、やがてシグレが口を開いた。 「うし、そんなら俺が知り合い誘ってくる」 「シグレがか?」 「おう。大丈夫、悪い奴じゃないから」  シグレの言葉にセツナとケントが顔を見合わせる。 「ま、いいぜ。任せる。……シグレの人選ってのがちょっと不安だけど」 「僕もいいよ。あはは、シグレの知り合いってちょっと気になるね」 「よし、決まり! ――ああもう、今から楽しみだ……!」  バーチャルリアリティー、という言葉はシグレのゲーマー魂を随分刺激したらしい。  悪友のその様子にセツナが共感を覚えたところで、昼休みの終了を告げる予鈴が鳴り響いた。 「あ、僕お昼全然食べてない」 「かっ込め」
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