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×××
ぴんぽーん、と時代錯誤的なインターホンが鳴った。
「お届け物でーす」
玄関先からそんな声が聞こえてくるので、黒髪黒目の少年ーーセツナはたった今起動させていた携帯ゲーム機をスリープモードに切り替えたのちに立ち上がる。
「母さん、宅配便が来るなんて言ってたかな……」
などとぼやきながら玄関の鍵を開け、配達業者の若い男から確認用の書類を受け取る。
そこにサインをして返すと、宅配業者は軽く頭を下げたあと、
「あざーっす。あ、荷物運び込んじゃっていいですかね?」
「荷物?」
セツナはここで違和感を覚えた。何せ目の前の業者は封筒一つ持っていないのだ。
「はい。ちょっと大きいんで」
「はあ……そういうことなら」
曖昧な表情でセツナは頷いた。
大きいもの、となると手紙などではなさそうだ。
お中元? いやいや、それくらいなら手渡しで十分だろうし……などと困惑するセツナの前で、業者の男性は表に停まるトラックの荷台に引っ込むと、すでにそこに待機していたらしいもう一人の業者と二人がかりでそれを持って出てきた。
セツナは目の前の光景が信じられずに瞬きを繰り返した。
なにせ宅配業者がトラックから持ち出してきた『お届け物』は、高さ二メートル、幅一メートル近くもある超巨大な衝撃吸収素材に梱包されていたのだから。
「これ玄関に置いていいっすか!?」
凄まじい形相で顔を真っ赤にする業者が聞いてくる。
「え? あの、それって何――」
「ぐぅっ……! すいません! 重いんで早く返事を……ッ」
「あ、わ、わかりました! 玄関のところで大丈夫です!」
「あざっす!」
宅配業者二人がかりで支えられていた巨大な物体は、セツナ宅の玄関上がってすぐのところにズゥゥゥン、と重厚な音を立てて降下を完了させた。
一体どれだけ重いのだろうか。
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