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ほおを引きつらせるセツナの目の前で、歴戦の宅配業者たちが体力をごっそり奪われた様子で荒い息を吐いている。
「フゥー……フゥー……では、自分たちはこれで失礼します」
「ああ、どうも……」
セツナは宅配業者たちが去っていくに任せかけたが、ふと思い出す。
「って待った待った! これ一体何なんですか!?」
だが時すでに遅く、宅配業者たちは一仕事終えた雰囲気を漂わせながらトラックに乗り込んでしまっていた。一秒後、トラックは呆然とした表情のセツナを残して発進、去っていく。
「プロなら説明責任くらい果たせよなー……」
などとぼそりと言い、セツナは玄関口に鎮座まします物体Xに視線を投げる。
サイズは明らかにセツナの身長より大きい。家の扉をくぐった時も梱包材の上端が扉の上部にかするほどだったのだ。こんなものが一体どうして誰からここに送られてきたのか、セツナにはいまいちわからない。
強いて言えば、こういう破天荒なことをしそうな人物に心当たりがないこともないのだが……だからといって目の前の光景の非現実性がぬぐわれるわけでもない。とりあえず中を見てみようとセツナは台所から踏み台を持ってきて、梱包材の上部を剥がす。
と、梱包材の真裏に触れた手が、かさりと音を立てて何かを掴んだ。
それを見ると、どうやら手紙らしい。
いきなりセツナの中で嫌な予感が膨らんだ。
……これ、まさか。
何の気なしに殺風景な封筒の裏側を覗くと、そこには律儀に差出人の名前が書いてあった。
「…………やっぱりか!」
その名前にセツナは目を見開く。
『葛城シンジより』。
それは紛れもなく、長らく顔を合わせていないセツナの実の父親の名前だったのだ。
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