仮想世界の箱庭へ

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××× 「なあシグレ。今日の放課後ってヒマか?」 「あん?」  私立旭(あさひ)学園、二年二組の教室にて。  昼休みの喧噪に包まれながら、セツナは一緒に昼食を食べている人物に声をかけた。  セツナの目の前にいるのは、男にしては長めーーというよりも面倒くさがって切るのをサボっているのが一目でわかる黒髪のクラスメイト。身体の線は細く、いかにもインドア派という雰囲気を醸し出す少年だ。  ただしやたらとふてぶてしい顔つきをしていて、まったく大人しそうには見えないというのがセツナの率直な感想になる。  名前は寺宇(じう)シグレといい、セツナの悪友だ。 「まあヒマっちゃあヒマだけど……それがどうかしたか?」  シグレは購買で買ってきたらしいおにぎりの包みを破りながら尋ねる。  セツナは頷き、 「ああ。実はちょっと付き合ってほしいとこがあるんだけど、それにはシグレが適任なんだよ」 「適任? ……ああ、なるほどな」  シグレはそれだけで察したように相づちを打つ。  シグレはセツナとは高校一年から、そろそろ丸一年の付き合いになる。さすが高校入学以来ずっとつるんでるだけあって察しがいいな、などとセツナは少し感心した。  シグレはスマートフォンの画面を素早く操作し、セツナに画面を向けてきた。 「で、セツナ」 「ん?」  シグレはスマートフォンの画面を素早く操作し、セツナに向けてくる。 するとそこには――カラフルなエプロンドレスに身を包んだ女性店員がトップをかざるホームページ。 「どのメイド喫茶にするんだ?」 「待てシグレ。一体どうしてそんな話になったんだ」  セツナにはわからない。いつの間に話がそんなところに漂着していたのか皆目見当もつかない。
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